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犬の診察

以前当医院女性従業員から「最近自分の飼い犬がよく壁にぶつかるので、見えているか診てもらえないでしょうか?」と言われました。自分は眼科医ではありますが、当然犬の眼を診察した事がありません。犬の事はわからないけど取り敢えず引き受ける事にしました。

後日診療所に連れてきた犬は可愛いミニチュアダックスでした。私は大の犬好きです。彼女に抱っこされた犬の頭を撫でようとしたとたん、「ウ~~ッ!」と威嚇されてしまいました。「この子は雄で人間の男性が大嫌いです。」と彼女は申し訳なさそうに言いました。それでも何とかなだめながら診察すると・・・そこには日常診療で見慣れた網膜色素変性症の眼底所見がありました。犬にも網膜色素変性症が存在するのだと驚きました。この疾患は視力低下、視野狭窄、夜盲を伴う遺伝性進行性の難病で近親者結婚によく見られます。

彼女に病名と疾患背景を伝えると「この子の両親は、いとこ結婚です」と言われました。正常な網膜は中心部に少しだけ確認できる程度なので、中心部の視野以外はほとんど見えていないであろう事、治療法は無く更に進行して視力が低下する可能性が高い事を説明しました。すると彼女は突然ぽろぽろと泣き出し、「見えない事は残念で可愛そうだけど、この子を一生大切に可愛がっていきます。」と犬を強く抱きしめました。私も思わず貰い泣きしそうになり、犬の頭を撫でようと手を差し出すと「ウ~~ッ!」とまた威嚇されてしまいました。

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